A.しっかり麻酔が効いていれば、痛くありません。
ただし、器具の出し入れなどの振動は消すことができないので、不快に感じることもあります。
1.根管治療が必要になる時
2.麻酔を効かせるための工夫
3.麻酔が効いていても不快感が耐えられない場合の対処法
1.根管治療が必要になる時
根管治療は大きく分けて、下記の2つに分かれます。
①初回根管治療
初回根管治療はみなさんが考える、「神経を抜く」治療です。
・むし歯がかなり深く、神経まで到達してしまった場合で、かつ、健康状態には戻れない(不可逆性)ほどの炎症が神経に起きてしまった場合
・外傷や過度の噛み合わせによる負荷など、なんらかの影響でむし歯がなくても神経が死んでしまった場合
などに行います。
歯の神経が強い炎症を起こしてしまっている場合に、根管治療が必要となります。
②再根管治療
再根管治療は、初回根管治療後や再根管治療後に、歯の根の先に再感染を起こしてしまい、歯の根の先周囲の組織に炎症が広がってしまった場合に行います。
①②はどちらとも、強い炎症が起きている場合に治療が必要となります。
炎症が起きている部位は、その組織は【酸性】の状態です。
歯科治療で用いる麻酔薬は【アルカリ性(塩基性)】です。
炎症部位に麻酔薬を注入すると、麻酔薬は中和されてしまい【中性】に傾いてしまいます。
したがって、根管治療が必要な歯はそもそも麻酔が効きづらいのです。
2.麻酔を効かせるための工夫
1で、根管治療が必要な歯はそもそも麻酔が効きづらいとお伝えしました。
それに加えて、上顎の歯か、下顎の歯かでも麻酔の効きやすさが異なります。
上顎と下顎では骨の「硬さ」「厚さ」が違います。
一般的には、下顎の骨の方が丈夫でしっかりしています。
歯は骨に埋まっていて、骨の外に歯ぐきがあります。
麻酔薬がしっかり効くメカニズムについては、大まかに下記の流れです。
歯ぐきに注射→麻酔薬が骨に浸透→骨に埋まっている歯に作用する
骨が硬くて分厚い下顎では、麻酔が効くまでにかなりの障壁があります。
これらを踏まえて、当院では、根管治療が必要と診断した場合、小さいのむし歯の治療を行う場合よりも麻酔が効きづらいことを想定して、事前にしっかり麻酔を効かせる工夫をしています。
行っていることは、下記の2つです。
①あらかじめ多めに麻酔する
こちらはなんとなくイメージがつくと思います。
②下顎孔伝達麻酔を行う
下顎の歯の痛みを感じる神経の上流に麻酔薬を流すことで、その下流全域に麻酔を効かせる方法です。
下顎の親知らず抜歯などの処置の際にも行う手法です。
3.麻酔が効いていても不快感が耐えられない場合の対処法
根管治療では、歯の中に細い器具を入れてガリガリと感染した部分の歯を削ります。
その際にかなりの振動が生じる場合があります。
あらゆる麻酔法を駆使して、歯を削る時の痛みをなくすことができても、その振動を消すことはできません。
そして、その振動を「痛い」と感じてしまったり、気持ち悪くなってしまう方も少なくありません。
その場合におすすめなのが、「静脈内鎮静法(IVS)」です。
静脈内鎮静法とは、点滴から薬を入れて、半分寝たような状態にする麻酔方法です。
実際に僕も親知らず抜歯をしてもらう際に体験しましたが、処置中の記憶は全くなく、気づいたら処置が終わっていました。
ただし、治療後の腫れや痛みは消すことができないので、その点はご注意ください。
治療時の恐怖心や不快感を取り除くことができる効果的な方法の1つなので、ぜひ、お気軽にご相談ください。
栗林歯科医院 歯科医師 監修