今回は、親知らず抜歯後の痛み・腫れはどのくらいか、ご紹介します。
1.親知らず抜歯後のリスク
2.親知らずは抜いた方が良いか?
1.親知らず抜歯後のリスク
医療行為には必ず、ある一定数のリスクがつきものです。
親知らず抜歯後に起こる可能性があることは、下記の6つです。
1)腫れ
親知らず抜歯後の腫れる程度は、個人差があります。
抜歯後2〜3日がピークで、その後1週間程度で徐々に引いていきます。
抜歯後に腫れる人と腫れない人の違いは、抜歯した時に、骨を削った部分が多いほど腫れます。
親知らずは骨の中に埋まっていることが多く、骨を削って歯を抜歯しますが、親知らずの生え方は人によって違うので、抜歯するときに骨を削る量も異なります。
そのため、腫れがあまり出ない方もいれば、大きく腫れてしまうという方もいます。
2)痛み
抜歯後2〜3日がピークで、その後1週間程度で徐々に引いていきます。
抜歯の痛みは、抜歯の処置中は麻酔をするので痛みは感じません。
抜歯途中で痛い場合は、そのまま続けずに、麻酔を追加するため、痛みを感じなくなります。
ですが、麻酔が切れ、傷口が治癒する過程で腫れるため、その腫れた圧によって痛みが出ます。喉が腫れると痛いように、抜いた箇所付近が治る際に腫れて痛みます。
抜歯後は、ロキソニンなどの痛み止めを服用して、痛みを感じにくい状態にします。
3)口が開けにくい
抜歯後2〜3日がピークで、その後1週間程度で徐々に引いていきます。
咀嚼筋という、口を開け閉めする時に使う筋肉に炎症が起こることで、一時的に口が開けにくくなります。
4)喉が痛い
親知らずは喉に近い場所にあるので、ものを飲み込む時に痛むことがあります。
抜歯後2〜3日がピークで、その後1週間程度で徐々に引いていきます。
5)ドライソケット
通常は、抜歯した後、その穴に血液が溜まってモチ状になり、血管や細胞が作られて傷口が治ります。
しかし、ドライソケットの場合は、抜歯した後の骨が露出してしまい、骨が細菌感染してしまっている状態です。この症状が起きてしまうと、1ヶ月近く痛むこともあります。
6)口・唇・舌の感覚が麻痺する
歯科医師が最も注意しているのは、感覚の麻痺です。
親知らずは他の抜歯と違い、「下歯槽神経」という神経の近くまで骨を削ることが多いです。
麻痺が起こる原因は、抜歯の途中で、下歯槽神経を手術用の器具で切削してしまう、神経管と親知らずが接している、などの場合に起きます。
そのため、親知らずを抜歯する前に、
・どれくらい神経と親知らずが近いか
・神経管と接している場合は、神経管の変形具合はどんな感じかをX線で撮影して、抜歯するかどうかの判断を行います。
三日月型のように、神経管の変形が強い場合は、歯の上の部分だけ取る方法や、二段階法、という方法を検討します。
(現在、二段階法は、抜歯後感染のリスク回避などのため、行っている医院も少ないようです)
人により抜歯後5時間程度、麻酔が効き続ける方もいます。
ですが、
・抜歯した次の日になっても、痺れた感じが取れない
・唇〜顎の皮膚を触った感覚が鈍い、触った感覚がない
・抜歯後、知覚過敏になった
・親知らずより手前の歯に違和感があるといった症状がある場合は、神経の麻痺が疑われるので、すぐにその旨を主治医に伝えましょう。
その後の対応は、神経の損傷具合で変わります。
1)抜歯後の腫脹で神経を圧迫している場合
治癒する過程で血液が歯の抜けた穴に溜まり、それが露出した神経を圧迫することがあります。
基本は、メチコバール(ビタミンB12製剤)という薬を処方し、それを服用することで数日で症状がおさまっていきます。
2)神経が部分的に損傷している場合
神経が部分的に歯と癒着していると、抜歯する際に神経の一部が親知らずについていってしまい、神経が損傷したり、抜歯時に神経管の薄い骨が折れて、それが神経の一部を損傷したり、といった抜歯時の動作によって損傷が起きます。
こちらも、まずはメチコバール(ビタミンB12製剤)を処方し、治癒をさらに促進するために、「星状神経節ブロック」という注射を行ったりすることがあります。
(治癒期間は6~18ヶ月程度必要と言われています)
3)神経が断裂している場合
切削器具や刃物によって神経が切断されることで起きます。
術後になるべく早く、神経をつなぐ処置が必要です。
しかし、大学病院などの専門的な機関での処置が必要で、タイミングを逸してしまうことも多いです。
その他の治療法は、部分損傷の場合と同じ、メチコバール(ビタミンB12製剤)を処方し、「星状神経節ブロック」の注射を行ったりします。
神経が断裂した場合は、完全な治癒は見込めないとされています。
2.親知らずは抜いた方が良いか?
親知らずは、「まっすぐに生えていない親知らず」は、抜いた方が良い可能性が高いです。
ですが親知らずは、闇雲に真横に生えた親知らずだから抜歯した方がいい、というわけではありません。
抜歯しようとしている親知らずと、神経との距離の近さによって状況が変わり、年齢が高いほど骨が硬くなっているので、抜歯の難易度は上がります。
歯科恐怖症がある場合は、親知らず抜歯でトラウマになってしまうこともあったり、全身疾患がある場合は、その後、合併症の危険性もあります。
これらのリスクをなるべく回避する方法は、年齢が若いうちに相談しておく、ということです。
若ければ年齢による難易度が上がることがなく、全身疾患になっている割合も少ないです。
神経管の変形が三日月型の場合に行う、二段階法という方法も、若年層の方が成功しやすいです。
また、部分的に神経を損傷した場合も、若年層の方が回復が早いです。
相談せず放置してしまい、隣の歯はむし歯にもなってることが多く、親知らずも痛くて抜かざるをえない、という状況が最も最悪です。
まずは、お近くの親知らず抜歯を行なっている歯科医院で、抜歯前にきちんと相談することをおすすめします。
栗林歯科医院でも、親知らず抜歯をおこなっているので、お気軽にご相談くださいね。
栗林歯科医院 歯科医師 監修