唾液検査で将来のむし歯リスクを調べよう

1.日常生活の予防とは?

病気になる前に未然に防ぐことを「一次予防」と言います。
病気が重症化する前に早期発見・早期治療を行うことを「二次予防」と言います。
重症化した病気の治療、リハビリテーションを行うことを「三次予防」と言います。
日常生活の中の予防について、基準をご紹介します。

ー日常生活の一次予防ー
・生活習慣の改善
・インフルエンザなどの予防接種

ー日常生活の二次予防ー
・健康診断
・病気の早期治療

ー日常生活の三次予防ー
・機能回復訓練
・リハビリテーション

2.お口の中の予防とは?

1で日常生活の予防をご紹介しましたが、お口にも予防があります。

ーお口に関する一次予防ー
・歯ブラシ指導(むし歯・歯周病予防)
・食事指導
・禁煙指導
・歯列矯正治療
・唾液検査でリスクを調べる
などが挙げられます。

歯列矯正治療は、
・歯ブラシをしやすくなること
・正しい噛み合わせを作ることで、むし歯、歯周病、噛み合わせ(顎関節症)を未然に防ぐことができる
ことができるため、一次予防に該当します。

ーお口に関する二次予防ー
・メインテナンス(再発防止・予防)
・むし歯治療
・歯周病治療
・根管治療
・親知らずの抜歯
などがあります。
病気の早期発見・早期治療が二次予防です。
病気を早期発見することで治療期間、治療コストを確実に抑えることができ、何より自分の歯を残すことができます。

ーお口に関する三次予防ー
・入れ歯治療など歯を失ったお口の治療
・物を飲み込むのが困難になった方々の嚥下訓練

お口に関しては、二次予防と三次予防の明確な線引きはないですが、分ける場合は上記のように分類されると考えています。

歯科医院に行くきっかけは、「痛くなったら行く」「歯がグラグラするから行く」という方が多いですが、これでは歯を残すことが困難になることが多く、治療しても必然的に、入れ歯などの機能回復治療になる確率が高いです。そこで、当院では、一次予防・二次予防に重点を置いた、「治療」ではなく「予防」推進に力を入れています。

2でご紹介する「唾液検査」は、お口に関する「一次予防」に分類されるので、まだ病気になっていない方は、ぜひ行っていただきたい、おすすめの内容です。

2.唾液検査で調べられること4つ

唾液検査という検査を行うことで、自分の歯が将来むし歯になりやすいかの未来予測ができます。
事前にお口の予防として、自分の将来のむし歯リスクが分かれば予防の方法が分かるので、歯を残せる可能性が高くなります。

唾液検査で行う内容は、下記の4つです。

1)唾液量

唾液の量が十分に分泌されているかを調べます。
唾液の量が多いと、下記のメリットがあります。
・お口の中の食べ物を、洗い流す速度が速い
・歯の質を強くする
・抗菌作用が働く

逆に、唾液の量が減ると、下記のデメリットがあります。
・お口の中の食べ物を洗い流せず不衛生になり、バイ菌が増殖しやすくなる
・再石灰化よりも脱灰が進みやすく、むし歯になりやすくなる
極端に唾液量が少ない方は、水分量が適切かどうか、全身疾患がないか、を確認します。

唾液検査では、5分間専用のガムを噛み、唾液の量を調べます。
(ガムを噛める年齢の方であれば、検査を受けることができます)

2)唾液が中性になるチカラ(緩衝能)

唾液の1つに脱灰を防ぐ、というものがあります。
食事をとると、お口の中はむし歯菌が酸を作り、酸性になります。
酸性のままだと歯はどんどん溶けていきます。
唾液には、その状態から中性に戻そうとするチカラがあり、そのチカラがどれだけ強いかは個人差があります。
唾液検査では、酸を中和させる能力(緩衝能)を調べます。
決まった時間に食事を摂らずダラダラ食べをしていると、緩衝能が低下する傾向にあります。
唾液緩衝能が低い方は、お口の中は脱灰が起こりやすい環境となるため、むし歯になりやすくなります。
数値が低い方は、食生活の確認を行います。

3)ミュータンス菌の採取

お口のミュータンス菌を採取します。

ミュータンス菌は、むし歯のきっかけを作るバイ菌だと言われています。
歯に付着する力を持っており、砂糖をエサにして活動をしています。
このバイ菌は、酸を作り出してむし歯を発生させます。
元々、赤ちゃんのお口の中にはバイ菌はいません。
しかし、お母さんと同じスプーンで小さく刻んで食事をあげるなどすると、お母さんの口の中のバイ菌が赤ちゃんに移り、赤ちゃんのお口の中にバイ菌が繁殖します。

この時に移るバイ菌がミュータンス菌と言われています。
感染の窓といって、生後19ヶ月~31ヶ月が特に感染しやすい時期と言われています。
ミュータンス菌は、減らすことが困難と言われていますが、歯ブラシを頑張ることにより、バイ菌の活動を抑えることはできます。


※ミュータンス菌の引用(株式会社ヤクルト本社

4)ラクトバチラス菌の採取

お口のラクトバチラス菌を採取します。

ラクトバチラス菌は、むし歯の進行に関わるバイ菌と言われています。
ミュータンス菌と同じく、歯ブラシを頑張ることでバイ菌の数を減らすことはできますが、歯にくっつくことができないので、むし歯でできた歯の穴や、形の合わなくなった詰め物や被せもの段差などに生息します。その穴や段差から、むし歯を掘り進め、進行しやすくなります。

ミュータンス菌と同じく、歯ブラシを頑張ることによってバイ菌の数を減らすことはできます。ただ、適合の悪い被せ物があると、その部分にバイ菌が留まるので、むし歯の活動を抑えることができません。

以上の検査を行い、その上で指導を行います。


※ラクトバチラス菌の引用(株式会社ヤクルト本社

5.唾液検査の手順

唾液検査は、60分×2回(検査・結果説明)で行います。料金は、¥5,500(税込)です。検査は、下記の手順で行います。

1)唾液量の測定

5分間ガムを噛み、唾液がどれくらい出るか測定します。

2)唾液が中性になるチカラ(緩衝能)の測定

採取した唾液をデントバフストリップスという紙に垂らし、5分間で色の変化があるか見ます。

3)ミュータンス菌の採取

検査の棒を舌の上で叩き、ミュータンス菌がどれだけお口の中にいるか調べます。

4)ラクトバチラス菌の採取

採取した唾液を寒天培地にかけ、ラクトバチラス菌がどれだけお口の中にいるか調べます。

唾液検査の流れは以上です。唾液検査を行うと、自分のむし歯リスクや原因が分かるので、自分に合ったむし歯の予防プランを知ることができます。
当院では、唾液検査の結果説明時に、分かりやすい結果説明の用紙をお渡しし、ご説明しています。

むし歯ができやすい、という方はぜひ一度、唾液検査を行い、むし歯リスクを知りましょう!

栗林歯科医院 歯科医師 監修

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