本日は、MTMという予防システムについてご紹介させていただきます。
〜目次〜
1.MTMとは?
2.日吉歯科診療所とMTM
3.唾液検査で調べること
4.PCRについて
5.OHI-Sについて
6.カリオグラムについて
1.MTMとは
MTMとは、メディカルトリートメントモデルの略で、山形県酒田市にある日吉歯科診療所の熊谷崇先生が作った用語です。
まずは、MTMの説明の前に、「予防」についてご説明させていただきます。
「予防」には三種類あり、一次予防・二次予防・三次予防があります。
一次予防
一次予防とは、病気になるのを未然に防ぐことを言います。
例えば、生活習慣の改善・予防接種などがこれにあたります。
お口に関する一次予防とは、
・歯ブラシ指導
・食事指導
・禁煙指導
・歯列矯正治療
が挙げられます。
歯列矯正治療も一次予防に入れている理由は、歯ブラシをしやすくすることと、正しい噛み合わせを作ることによって、虫歯、歯周病、顎関節症を未然に防ぐことができるためです。
二次予防
続いて、二次予防についてです。
二次予防とは、病気が重症化する前に、早期発見・早期治療を行うことを指します。
例えば、健康診断・早期治療がこれにあたります。
お口に関する一次予防は、
・検診(メインテナンス)
・虫歯治療
・歯周病治療
・根管治療
・親知らずの抜歯
いうまでもなく、歯科検診は重要となります。
また、病気の早期発見によって治療期間、治療コストを確実に抑えることができ、なにより、自分の歯を残すことが可能となります。
三次予防
最後に三次予防です。
重症化した病気に対して、治療、リハビリテーションを行うことを指します。
例えば、機能回復訓練、言語訓練などがあたります。
お口に関しては、二次予防との明確な線引きはないですが、入れ歯治療など歯を失ったお口の治療、物を飲み込むのが困難になった方々の嚥下訓練が三次予防にあたると考えられます。
歯科医院に行くきっかけは、
「痛くなったら行く」
「歯がグラグラするから行く」
という方が多いですが、この訴えに対しては、歯を残すことが困難になることが多く、必然的に入れ歯などの機能回復治療になります。
そこで、当院では、一次予防、二次予防に重点を置いた【治療】ではなく【予防】を推進していくことに力を入れています。
予防を行うことで、ご自身の歯が残る可能性が高くなります。
そこで、MTMが重要になります。
MTMでは、【予防】を行うだけではなく、お口の中の歯周病・虫歯のリスクをあらかじめ判定することによって、患者さん一人一人の予防プログラムを立案し、メインテナンスまでの流れを作って行くことが可能なのです。
2.日吉歯科診療所オーラルフィジシャンセミナーレポート
まず、MTMのついて書く上で、欠かせないのが、山形県酒田市にある日吉歯科診療所の院長の熊谷崇先生です。
当院では、歯科医師・歯科衛生士4人で3回にわたるオーラルフィジシャン育成コースを受講してきました。
内容は、処置よりも、
1) 歯科医師・歯科衛生士の考え方をまず変えること。
2) 患者さんに「予防」の大切さを伝えること。
この2点を教えていただきました。
そして、この2点から実現することで確実に患者様の人生が豊かになると確信し、当院では本格導入を決めました。
「予防」の重要性から話が始まり、最終的には「日本国民の歯を守る」と行った内容に至り、実習も行いました。
3.唾液検査で調べること
唾液検査の前に、唾液の作用の中で重要な再石灰化についてご紹介します。
虫歯とは、口の中に存在する虫歯菌が酸を作り出し、その酸が歯を溶かし、やがて穴が空いてしまう病気です。この歯が溶けていく過程を【脱灰】といいます。
ですが、脱灰が起きたからといって、すぐに虫歯になるわけではありません。
唾液には、溶け出した歯を再び修復する働きがあります。これを再石灰化といいます。
初期虫歯は再石灰化によって治すことができます。
つまり、この再石灰化は虫歯予防で非常に重要な役割を果たします。
唾液には多くの作用があります。その多くの作用に伴い、お口の中の環境は整えられています。
唾液検査という検査では、患者様の唾液を採取し、培養した後にお口の中の細菌の量を調べます。
どのような唾液の作用を検査内容は以下の通りです。
(1) 唾液量
(2) 唾液緩衝能
(3) ミュータンス菌の採取
(4) ラクトバチラス菌の採取
(1) 唾液量
唾液の分泌量が減少すると、口の中が不衛生になってバイ菌が増殖しやすくなってしまいます。さらに、再石灰化が進まなくなってしまうので、脱灰が進みやすく、虫歯になりやすくなります。
極端に唾液量が少ない方などは、水分量が適切かどうか、全身疾患に問題はないかを確認します。
(2) 唾液緩衝能
脱灰を防ぐ作用の一つです。
食事をとるとお口の中は、酸性になります。
酸性のままだと歯がどんどん溶けていくので、それを防ぐためお口の中を中和させる能力のことをいいます。
決まった時間に食事を摂らない、いわゆるダラダラ食べをしていると、緩衝能が低下する傾向にあります。
唾液緩衝能が低い方は、食生活の確認を行います。
(3)ミュータンス菌の採取
このミュータンス菌は、虫歯のきっかけを作るバイ菌と言われています。
元来、赤ちゃんのお口の中にはバイ菌はいません。しかし、お母さんと同じスプーンで小さく刻んで食事を挙げるなどすると、お母さんの口の中のバイ菌が移り、赤ちゃんのお口の中にバイ菌が繁殖します。この時に移るバイ菌がミュータンス菌と言われています。
感染の窓といって、生後19ヶ月~31ヶ月が特に感染しやすいと言われています。
ミュータンス菌は、減らすことが困難と言われていますが、歯ブラシを頑張ることにより活動性を抑えることは可能です。
(4) ラクトバチラス菌の採取
このラクトバチラス菌は、虫歯の進行に関わるバイ菌と言われています。
歯ブラシを頑張ることによってバイ菌の数を減らすことはできます。
ただ、適合の悪い被せ物があると、その部分にバイ菌が留まるので、虫歯の活動を抑制することができません。
以上の唾液の検査を行い、適切な指導を行なっていきます。
4.PCRについて
続いて、PCR(プラークコントロールレコード)についてご説明します。
お口の中にはバイ菌が沢山いて、歯にもたくさんこびりついています。
しかし、そのバイ菌は白いので、なかなか実感がない方が多いです。
そこで、染め出しといってバイ菌がピンク色と青色に染まる液体を使うことで可視化して説明しています。
この染まっている歯の部分が15%以下になることを目標にしています。
この染め出しによって、磨き残しがどこにあるかも分かりやすくなります。
5.OHI-Sについて
歯周病のリスク評価を行います。
現在の歯茎の状態を、具体的な数値で表します。
そして、改善後にどれほど良くなったかも数値で表すので、改善されたかが一目瞭然で分かります。
6.カリオグラムについて
・う蝕経験
・全身疾患
・食事内容
・飲食頻度
・プラーク量(バイ菌の量)
・ミュータンス菌の量
・フッ化物コントロール
・唾液量
・唾液緩衝能
・臨床判断
以上のすべてのデータをもとに、グラフ化してご説明します。
そして、どこをどう変えたら、良くなるかといったご提案もさせて頂きます。
以上の流れで、当院ではMTMシステムを行っています。
そして、上記のリスク判定や検査が終わった後に、歯科衛生士によって口腔内を徹底的に清潔な状態にします。
清潔になった後に、初めて虫歯治療に取りかかります。
「虫歯治療を先にしなくて大丈夫?」と疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、当院側で、虫歯が進行しないように管理いたします。
また、不潔な状態で歯を削って詰め物などの治療を行っても、再び虫歯になるリスクが高くなります。
そのため、MTMシステムで清潔になったお口の状態で虫歯治療を行っていきます。
もちろん、歯が痛い時は、優先的に応急処置をし、痛みを取り除いた後に、予防プログラムを行なっていきます。
治療についてご不明点がある場合は、お気軽にスタッフにお声掛けください!
栗林歯科医院 歯科医師 監修